テクノロジストのひとり言⑬ 「ドット型国家(立川)」の「地域包括ケアシステム」を考える【後半】

テクノロジストです。
さてお約束の「立川市の地域包括ケアシステム」の施策に関してですが、下記の2点を意識しました。

①医療資源に関して近隣の各市を取り込む事で、現在の6圏域の施策を検討しました。
②現在立川市で計画中の「地区計画」を取り込む事で、「まちづくり」の視点から施策を検討しました。

内容を6圏域対応に整理すると下記のようになります。

(1)南部西地区 富士見町、柴崎町 
【圏域の概要】
○JR立川駅南口に面し、バス乗り場、商業施設の都市機能を有し、立川南通りから南へ一歩入ると市街地が広がっています。 
○JR中央線が、圏域の富士見町と柴崎町の町境の形で運行し、富士見町北部ではJR青梅線が運行しています。 
多摩都市モノレールが、柴崎町の東部を南北に通っています。柴崎町に立川南駅柴崎体育館駅を有します。 
○残堀川が富士見町地域を縦断し、柴崎町の南部を経由し多摩川に注いでいます。段丘下の河川沿いには遊歩道が整備され大いに利用されています。 
○圏域南部は多摩川と接しており、早朝のウォーキングなど、憩いの場となっています。 
【圏域の現状と課題】
河岸段丘によってできた急傾斜地があり、富士見町・柴崎町とも南北の徒歩や自転車による移動がしづらくなっています。滝ノ上会館や柴崎会館は段丘の上に位置し、たまがわ・みらいパークや多摩川図書館、柴崎福祉会館などの施設は、新奥多摩街道の南側にあります。安全に移動できる身近な場所に、住民の集える拠点が求められています。(地域福祉アンテナショップなど。) 
急傾斜地に近い地域は、風水害時の土砂災害に警戒する必要があります。 
富士見町にはエレベーターのない5階建ての団地があり、建築されてから40~50年が経過し住民の高齢化が進んでいます。
特に上階に暮らす方の昇降時の負荷が、生活に影響し始めています。 
柴崎町の立川駅周辺は、古くからあった個人商店が徐々に減り、顔なじみの関係が少なくなりつつあります。また、安価で食料品等の生活必需品が手に入る環境も減りつつあります。 
【施策】
①富士見町にはエレベーターのない5階建ての団地
 東京都住宅供給公社 立川富士見町住宅

公社立川富士見町住宅

⇒よく整備された団地なので後に述べる「けやき団地地区地区開発」を参考にして老朽化した住宅団地を建て替え等を適切に誘導し、多世代のつながりが続く安心して暮らせる住環境の形成や、周辺市街地環境との調和に配慮した、豊かな緑によるうるおいやゆとりのある良好な住環境の維持・保全を図るため、地区計画を決定して区域の整備・開発及び保全に関する方針と地区整備計画を定める。

②富士見町・柴崎町とも南北の徒歩や自転車による移動がしづらい。
⇒急傾斜地であること、風水害時の土砂災害を考慮すると、関連施設の移設も含めて土砂災害の影響を受けない場所に転出。

(2)南部東地区 
国立駅西地区地区計画に合わせて、南部東地区は、モデルケースとして展開する
都市計画上「医療・介護」重点地区として位置づける 
国立市エリアも含めて地域包括ケアシステムを構築する。
【圏域の概要】
〇錦町はJR立川駅南口に近接し、商業施設が広がり、駅周辺から一歩入ると市街地が広がっています。 
JR南武線の西国立駅が、圏域中央に位置し、線路で圏域を縦断しています。 
錦町南部は、多摩川と接し、野球場・陸上競技場を有する立川公園など、うるおいあるオープンスペースが広がっています。羽衣町南部には矢川緑地が広がっています。 
【圏域の現状と課題】
〇錦町は、オートロックマンションの増加により、安否確認等が難しくなっている中、にしき福祉相談センター*を中心とした至誠学舎立川と連携を取りながら活動しています。 
羽衣町は、自治会活動が活発で市民防災組織の結成や認知症見守り声かけ模擬訓練実施の実績があり、地域包括支援センター自治会、関係機関が協働した活動を展開しています。 
地域支え合いネットワーク事業(ちょこっとボランティア*)に力を入れており、ごみ出し支援を中心とした見守り活動が盛んな地域です。 
介護予防に積極的に取り組み、内容の充実した教室を定期に開催しています。 
障害者支援の事業所やNPO*、医療機関が多く、各所と連携していますが、複合的な課題を抱える方への支援ではさらなる連携や協働が必要と考えます。 
【施策】
 障害者支援の事業所やNPO医療機関が多く、当初の「ドット型国家」の主力産業である「社会保障」の基盤地区として位置付ける地域である。西国立駅西地区計画+南武線立川⇒谷保高架化による「歩ける街づくり」を目指す、さらに文教地区の国立市と連携して「人づくり/再生産」の基盤地区としての開発も視野に入れる。

西国立駅西地区地区計画|立川市

南武線・谷保~立川「高架化」構造や工期など詳細公表 踏切19カ所を解消・廃止 | 鉄道ニュース【鉄道プレスネット】

(3)中部地区 
中部地区は、その特殊性から、従来の延長線ではなく、「特区」として取り扱う。地区内に存在する「立川広域防災基地」の資源を活用する。または、分譲マンションの管理組合と地域コミュニティの関係等を考慮する必要がある

【圏域の概要】
〇曙町は立川駅北口に面し、商業施設やホテルが建ち並ぶ中心市街地があります。東西には戸建て住宅や高層マンションなどの住宅地が広がっています。 
〇高松町は古くからの住宅地ですが、家屋の建て替えやマンションなどが増えており、若い世帯が増えるなど、住民層の変化があります。 
緑町は圏域西部に位置し裁判所や警察署が立ち並ぶ他、国営昭和記念公園を有し市民の憩いの場として豊かな環境が広がっています。 
公共施設は利便性が高くたくさんの方に利用されています。

【圏域の現状と課題 】 
古い家屋の建て替えや新規マンションによる住民の変化があり、ご近所づきあいがなく孤立する高齢者が増加しています。これまで構築されていた地域のつながりが薄れてきています。 
〇とりわけオートロックマンションにおいては住民への見守り訪問や安否確認が困難となっており、実態把握がしにくい状況となっています。 
住宅が密集し生活道路が狭く大規模災害時の救護活動に懸念があります。 
〇駅周辺という事もあり、地域の活動拠点となる場所の確保に苦慮しています。 

【施策】

中部地区+泉町は、「立川広域防災基地」を持つ地区としての役割を意識する。

立川広域防災基地

https://www.bousai.go.jp/oukyu/kunren/yobishisetu/pdf/tachikawa.pdf

(4)北部東地区 
北部東地区
窓口へのアクセスは、「徒歩」で移動できる範囲を前提とする。国分寺市小平市との「生活圏」を意識した共同医療・福祉体制を構築する。

【圏域の概要】
○圏域は国分寺市を挟み、若葉町は小平市にも接しています。 
○栄町は、芋窪街道・立川通りのバス通りに面し、JR立川駅へのアクセスは良好です。若葉町もJR立川駅国立駅へのバス路線が整備されています。 
○栄町は、全域で住宅地が広がり、木造住宅が多い地域は、生活道路は狭く大規模災害時の救助等の活動に支障があると懸念されています。 
○若葉町は、小平市との市境に東西に広い若葉町団地を有し、南部には国分寺にまで続く大規模な「けやき台団地」があります。
交通量の多い五日市街道が東西に走り、両脇には住宅や大規模な農地もあります。

【圏域の現状と課題 】
立川市で最初に地域福祉コーディネーターが配置され、早くから地域連携が進んでおり、高齢者に限らず地域との協働が図られています。 
圏域が国分寺市を挟んだ地形になっており、地域包括支援センターが若葉町の端に所在することから、栄町の住民がセンターを利用することが困難な地理的状況です。そんな中、少しでも利用しやすくするために、出張包括を栄町に2か所設置して活動拠点を増やしました。まだ、利用者が少ないため、センターのあり方や運用方法を検討していく必要があります。 
圏域が市境にあるので、一つの地域として考えたとき隣市との協働は不可欠です。

【施策】
「けやき団地地区地区計画」を地域包括ケアシステムを構成する「モデル団地」として位置づける。
【けやき団地地区地区計画】
けやき台団地地区では、けやき台団地地区地区計画(約11.9ha)を定めています。
当初決定告示日:令和6年6月24日
本地区は、立川市の北東部に位置し、住宅団地や教育施設などからなる住宅地です。
老朽化した住宅団地の建て替え等を適切に誘導し、多世代のつながりが続く安心して暮らせる住環境の形成や、周辺市街地環境との調和に配慮した、豊かな緑によるうるおいやゆとりのある良好な住環境の維持・保全を図るため、地区計画を決定して区域の整備・開発及び保全に関する方針と地区整備計画を定めています。

公団けやき台団地

(5)北部中地区 
窓口へのアクセスは、「徒歩」で移動できる範囲を前提とする。
営団地は、高齢者の市内移住受け入れや医療・介護職員向けの住居として計画的に活用する。

武藏大和市東大和市との「生活圏」を意識した共同医療・福祉体制を構築する。

【圏域の概要】
西武拝島線が圏域北部を東西に通っており、多摩モノレールが圏域中央部を南北に縦断しています。 
〇宅地・団地などの市街地のほか、農地などの緑も広がり、玉川上水ではホタルが見られる場所もあります。 
〇圏域南側に位置する泉町は、市役所・消防署など庁舎の他、大規模商業施設や国営昭和記念公園を有し、にぎわいとやすらぎの交流都市立川を象徴させる地域です。 

【圏域の現状と課題 】
6圏域の中で、最も高齢者人口の多い地域です。民生児童委員、地域福祉コーディネーター、地域包括支援センターの3者による懇談会を各町で行い、受援力の考え方を広めています。 
〇モノレールやバスなどで南北の移動はしやすいものの、砂川エリアから幸福祉会館や地域包括支援センターへの移動に路線バスの乗り継ぎが必要です。また五日市街道沿いの歩道が狭く、車椅子走行やすれ違い通行に支障があります。 
地域包括支援センターが圏域の東端に位置しており、東西の移動問題から、砂川地区への活動拠点を検討することが必要です。

【施策】
 「地域包括ケアシステム」における「都市農業」の活用を検討する。
家族構成、医療・介護資源を考慮して「在宅医療・介護」のモデルケースとする。

(6)北部西地区 
窓口へのアクセスは、「徒歩」で移動できる範囲を前提とする。

【圏域の概要】
〇圏域の中央部を西武拝島線が東西に横断し、上砂町には武蔵砂川駅、西砂町には西武立川駅を有しています。 
〇圏域中央部には大規模な都営住宅やURの分譲や賃貸、市営住宅もあり、都営住宅では建て替えも進んでいます。 
玉川上水が東西に流れ、うるおいある水辺環境があり、農地も広がっています。 
〇圏域が市の西部に位置するため、JR立川駅へ向かう路線があり、隣市(昭島市)へのアクセスが便利な地域もあります。 

【圏域の現状と課題 】
〇大規模な都営団地が2か所、その他URや市営住宅、戸建住宅など住まいの形態は多様となっています。JR立川駅までの交通手段としては、路線バスから離れた地域では電車などの乗り継ぎが必要です。 
〇西砂町では3世代同居家族も多いが、世代交代が進み、新興住宅も増えてきています。 
〇圏域面積が広く、外出のついでにちょっとした相談をする場や気軽に集まる場の確保が難しい地域です。 
〇北部西地域は、介護保険事業所や医療機関などが少ないものの、市を越えての介護保険事業所や医療機関との連携を図っています。 

【施策】

北部西地区+武藏村山市昭島市との「生活圏」を意識した共同医療・福祉体制を構築する。
⇒在宅医療・介護のモデルケースとする。
「大規模な都営団地が2か所、その他URや市営住宅」は、高齢者の移住先+医療・介護施設で働く職員に対する「コモン」として有効活用する。

さらに、下記の地区計画を取り込む。

村山工場跡地地区地区計画|立川市

西武立川駅南口地区地区計画|立川市

 

以上です。