【コラム】『社会的連帯経済(SSE)』を学ぶ

 今回は、先に書籍紹介した「働くことの小さな革命 ルポ 日本の「社会的連帯経済」」の内容の整理になります。(但し、大幅抜粋加工してあります)

【内容】

 世界には既存の資本主義経済とは異なる経済をつくることで、誰もが人間らしく、安心して暮らせる社会を築こうと歩む人たちが、すでにいる。
社会的連帯経済(SSE=Social and Solidarity Economy)と呼ばれる経済を形成する人々だ。社会的連帯経済とは、企業間の競争による利潤の追求とそれを基盤とする経済成長よりも、社会的利益の為に連帯して、人と(地球)環境を軸にした経済を指す。さまざまな協同組合やNPO、共済組合、財団、フェアトレード社会的企業有機農業、地域通貨のような「補完通貨」の運営などに携わる者が、その担い手だ。

具体的な例を紹介すると

子ども食堂
 日本で最も急速に普及しているものの一つ「子ども食堂。日本の子どもの7人に1人が、平均的な手取り収入の半分以下の所得しかない家庭で暮らしている。そう言われるようになって久しいが、この子どもの貧困問題を前に、子どもに食事や居場所を提供する子ども食堂が次々と生まれ、2024年2月時点で、全国に9000以上存在する状況になった。それは、国内の公立中学校とほぼ同じ数だ。子ども食堂を利用する人の数も、推定で年間およそ1,584万人。利用者の1/3近くは成人だというから、その役割は単なる子どもの貧困問題への対応ではなく、より広い意味でセーフティネット、社会基盤づくりに及んでいるのは明らかだ。市民のコモンとしての役目を強化し地域力をアップする役割を担おうとしている。

②フードバンク
 日本では、まだ食べられないのに廃棄されている食べ物、いわゆる「食品ロス」が、2022年度時点で年間472万トンもあった。その一方で、貧困問題は年々深刻化しており、食べるに困る人たちに規格外品などの未利用食品を無償で届ける「フードバンク」と呼ばれる団体・活動は、全国に270以上ある。
 フードバンクは、さまざまな組織と市民が一体となって、社会を支える仕組みの一つ。その活動を通じて、企業に食品ロスや貧困問題に気づいてもらうのと同時に、地域の人々に身近なところにある問題に関心を持ってもらえることに、大きな意義がある。家で余っている食品を寄付することを通じて問題に気づき、困った時はお互い様という地域の助け合いの文化が育つ。

上記のような「社会的活動」を行っている組織もあれば、

地域通貨という「地域による地域のための通貨」を使って地域の未来をつくろうとしている人もいる。
 飛騨信用組合が運営するさるぼぼコインは、モバイル決済の電子通貨だ。ユーザは2023年9月時点ですでに3万人を超え、累計流通額は約80億円(2023年3月末)だ。
 さるぼぼコインは飛騨信用組合に口座を持っていなくても、スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、飛騨信用組合の窓口や飛騨・高山市内に7台ある専用チャージ機、全国のセブンイレブン銀行ATMでお金をチャージすれば、誰れも利用することが出来る。支払いも専用アプリを使ってQRコードで行えるので、とても便利だ。飛騨信用組合に口座のある人は、預金からチャージすることもできる。また、飛騨信用組合に口座を持つ個人や事業者同士なら、互いの送金にも使える。
 行政と連携した取り組みも豊富だ。市に納める税金や公共料金、各種証明書の発行手数料、公立病院での支払いなど、すべてさるぼぼコインが使える。

経済的な規模に懸念をお持ちの方は、

①生協から生まれたワーカーズ・コレクティブ
②失業者を守るために生まれたワーカースコープ
③協同組織金融機関は、営利を目的とせず、協同組合方式で運営されている。日本には「労働金庫」(ろうきん)」がある。

 何故、普及が遅れたかは、日本において、ワーカーズコープやワーカーズ・コレクティブのような「労協」と呼ばれる組織自体は、既に40年以上前から活動しているわけだが、その存在が一般にも注目されるようになったのは、ごく最近のことだ。きっかけは、2020年12月の「労働者協同組合法(労働法)」の成立と、2022年10月の同法の施行だろう。実は、2020年12月以降、ワーカーズコープ連合会やワーカーズ・コレクティブネットワークジャパンなどに所属する組織のどれ一つとして、法的に「労協」として登録されているものはなかった。労協のための法律がなかったからだ。

労協法は、「多様な就労の機会」の創出と「地域における多様な需要に応じた事業」を促進することを直接的な目的とし、その先に「持続可能で活力ある地域社会」を実現することを掲げているが、その基本的な目的として、次の三点を挙げている。
①組合員が出資
②組合員それぞれの意見を反映した事業運営(平等・民主的)
③組合員が事業に従事
その定款には、組合員一人ひとりの意見反映の方法を明記しなければならず、1年間の意見反映成果を総会で組合員に報告することが、理事に義務付けられている。
また、企業と異なり、余剰金が生まれても、それを協同組合の事業や将来のために積立て、利用する「非営利性」が重視される。

 日本では、会社中心の社会構造のもとで、労働者は定年まで働ける面倒見のいい企業に雇用されるのが「最善」だと信じる社会意識が広がっている。正規雇用を得られれば、(国ではなく)会社があらゆる面で世話をしてくれる、経済的に豊かで安定した暮らしができるという「常識」が、まだまだ共通感覚となっている。そうした「最善」や
「常識」への執着は強く、社会的連帯経済の主役である非営利組織で働いたり、創意工夫のある自主事業を始めたり、新たな働き方を…それが地域を活性化する。

以上です。