テクノロジストのひとり言① 市場の影響から社会を防衛する

備忘録的につぶやきます。

前回の「書籍紹介:創造的福祉社会(広井良典)」で何を勉強させて貰ったかと言うと

一番目に:

第1章 創造的定常経済システムの構想―資本主義・社会主義エコロジーの交差の「社会的セーフティネットの構造と進化」の内容です。
これは、「社会的セーフティネット」が資本主義の進化の中で歴史的にどのように展開してきたかを考えてみる
⇒これは、カール・ボラギーが言っている「市場の影響から社会を防衛しようとする動き」と考えると理解しやすい。
簡単に説明すると
第一ステップとして、当初それは市場経済から脱落した者への公的扶助ないし生活保護という”事後的救済策”から始まった。(その象徴的起源は1601年のイギリスにおけるエリザベス救貧法)。現金支給中心の事後的な再配分である。
第二ステップとして産業化ないし工業化が本格化した19世紀後半には、大量の都市労働者の発生を前にして、(上記のような事後的な救済策では到底間に合わなくなり)雇用労働者が事前に保険料を払って病気や老後等に備える仕組みとしての「社会保険」という、より事前的ないし予防的なシステムが導入された。(1870年代のドイツ・ビスマルク時代における社会保険三法の成立以降)
第三ステップとして、世界恐慌に直面し、社会保険の前提をなす「雇用」そのものが確保出来ないという事態に至ると、ケインズ政策という、市場経済へのより積極的な介入-公共事業や社会保障による再分配を通じた需要喚起と、それによる経済成長そして雇用そのものの創出政策-が開始された。これは、市場そのものに政府が介入し、その拡大を管理するという意味で、いわば資本主義のより中枢に向けた修正が行われたことになる。

「資本主義の進化」という大きな視点でとらえると、
それぞれの段階において分配の不均衡や成長の推進力の枯渇といった”危機”に瀕した資本主義が、その対応を”事後的”ないし「周辺」レベルでのものから、順次”事前的”ないしシステムのもっとも「根幹」(あるいは上流)にさかのぼったものへと拡張してきた。という一つの太い線を見出すことができる。

同様に

第1章 創造的定常経済システムの構想―資本主義・社会主義エコロジーの交差の「社会保障財源について―経済システムの進化と”富の源泉”」の内容です。

⇒これも、カール・ボラギーが言っている「市場の影響から社会を防衛しようとする動き」と考えられます。

「税」とは一体何であろうか。それは何らかの意味での「富の再配分」の装置であるとともに、その時代における主要な”富の源泉”に対してかけられるものと言えるだろう。
●工業化(産業化)が本格化する以前の農業中心の時代においては、”富の源泉”は圧倒的に「土地」であり、実際、日本においても、明治期を通じて税収の最大部分は、「地租」すなわち土地課税だった。
●工業社会となり、企業等による生産活動が”富の源泉”になると、所得税そして法人税が税収の中心を占めるようになる(産業化社会・前期。日本でも大正期半ばに所得税が地租に代わって税収の一位となった)。
●モノ不足の時代が終わり、消費社会つまり生産(供給)よりも消費(需要)が経済を駆動ないし規定する主要因となり、消費税が表舞台に出てくる(産業化社会・後期)。1967年当時において一般消費税を本格的な形で導入していたのはフランスとフィンランドのみだったが、68年にはドイツ、69年にはスウェーデン、73年にはイギリス、イタリア等が導入に踏み切り、順次税率の引上げを行っていった。
●経済が成熟・飽和していく中で「ストック」の重要性が再び大きくなっていくとともに、環境・資源制約やその有限性が顕著化し、環境ないし自然という究極の”富の源泉”が認識されるようになる。

つまり、現在我々が直面している課題は、過去からの連続的なもの線上に有る事が理解できるのである。

 

以上 備忘録です。